アクセサリーブランド「The Stubborn King」
王恒さん 周哲浩さん

大阪発のアクセサリーブランド「The Stubborn King(ザ・スタボーン・キング)」が、静かに存在感を高めている。その歩みは単なる新規参入ではない。10年以上にわたる試行錯誤と蓄積を経て、日本で花開いた「再出発」の物語である。
ブランドの原点は2013年、中国・武漢で誕生したハンドメイド工房「カジシャ(咔叽舍)」にさかのぼる。アクセサリー制作を軸に技術とデザインを磨き続けてきた。その経験を礎に、創業者の王恒氏と周哲浩氏は2024年に日本進出を決断。翌2025年6月、大阪市で法人登記を行い、国際ブランドとして新たな一歩を踏み出した。中国での長年の蓄積と、日本という厳格な市場での挑戦が交差する実業型スタートアップの一例である。
軍人から起業家へ
創業者の王恒氏は山東省出身、武漢育ち。武漢大学大学院修了後、公安消防部隊に入り18年間勤務した異色の経歴を持つ。火災や水害の現場で培った規律と実行力は、退役後の起業にも色濃く反映されている。2019年の退役後、趣味として続けてきた手工芸への情熱を軸に、新たな道を選んだ。
共通の情熱が結んだ協業
転機となったのは、デザイナーの周哲浩氏との出会いだ。バイクやクラフトへの共通の関心を通じて意気投合し、中国の手工業界の現状に対する問題意識を共有。オリジナルブランドで職人精神を体現したいという構想を具体化させた。
2013年に武漢で工房を設立し、長年にわたりアクセサリー制作の技術と経験を蓄積。来日後、大阪で法人化し、「The Stubborn King」として再出発した。王氏が事業運営や市場開拓を担い、周氏がデザインと技術を担う。明確な役割分担のもと、二人三脚でブランドを築いている。
日中ハンドメイド業界の差
海外進出の背景には、中国市場の構造的課題があった。中国では経済成長に伴い効率や回転率が重視され、手工芸はコストや時間の面で不利になりがちだ。加えて、知的財産保護の不十分さや模倣品の流通も、オリジナル志向の作り手にとって大きな障壁となっている。
一方、日本は品質基準が厳しく、知的財産保護も整備されている。さらに「職人文化」への社会的評価が高く、手工芸が持続可能な産業として成立しやすい環境にある。王氏らはこの違いに着目し、日本を「技術と価値が正当に評価される場」と位置づけた。
言葉と文化の壁を越えて
もっとも、日本での起業は容易ではなかった。言語の壁に加え、商習慣や品質基準の違いが立ちはだかる。創業初期、二人は大阪市内の工房やメーカーを一軒一軒訪ね、自らの製品を売り込んだ。
精緻な仕上がりは評価を得たものの、意思疎通の難しさが商談の障害となる場面も多かった。それでも王氏は独学で日本語を学び、市場や展示会に足を運び続けた。「近道はない」と語る姿勢は、軍務で培った忍耐の表れでもある。
体験型モデルで差別化
同ブランドの特徴は「カスタマイズ体験」にある。従来の完成品販売にとどまらず、顧客自身が制作に参加できる仕組みを導入。アクセサリーやデニム、レザー製品などを自由に組み合わせ、自分だけの一品を作ることができる。
均質化が進むファッション市場において、「個」を重視するこの手法は日本の消費者にも新鮮に映る。今後は日本各地への店舗展開も視野に入れている。
実業で示す信頼
近年、日本では外国人の投資・経営活動に対する視線が厳しさを増している。その中で王氏は、投機ではなく実業に根ざした姿勢を貫く。品質と誠実さで信頼を築くという王道のアプローチこそが、異国での持続的成長につながるとみる。
中国で培った創造力と、日本で磨かれる品質意識。その融合は、単なるブランドの成功にとどまらず、日中のものづくりの新たな可能性を示している。
The stubborn king
和桜商事株式会社
https://thestubbomking.co.jp